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「金の調整局面も国際商品投資拡大は不変」
株式会社オーバルネクスト 東海林勇行氏
2008年4月18日更新
金は年金基金など機関投資家の国際商品投資拡大を受けて上値を試し、今年に入ってから一段高となった。現物相場は年初に1980年1月に付けた史上最高値850ドルを突破し、3月には1,031.65ドルまで上昇した。しかし、900ドルを超えてから実需筋が買いを見送ったため、3月18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後にドル高に振れたことをきっかけにこれまで買い上げたファンド筋の利食い売りなどが出て調整局面を迎えた。また米サブプライム問題による欧米の金融機関の損失が拡大し、ヘッジファンドに担保積み増しが求められたことも利食い売りを促す要因となった。金市場において長期投資目的のバロメーターとなる金ETF(上場投資信託)の現物保有高を見ると、3月18日の825.25トンをピークにして24日に796.56トンに減少した。ただ米国の景気後退観測などで追加利下げ見通しが強く、国際商品投資の拡大傾向に変わりはないことから安値は買い拾われ、3月末には800トン台を回復した。4月に入ると、国際通貨基金(IMF)が財政再建策に金売却を盛り込んだことが伝えられた。今後、米議会の承認を得て実際に金が売却されれば上値を抑える要因になるとみられる。ただ欧州の中央銀行のように秩序だった売却になると予想され、調整局面を迎えても一時的なものになる可能性が高い。3月の米雇用統計が予想以上に悪化したことを受けて米国の利下げが続き、年末には政策金利が1.00%(3月18日のFOMCで2.25%)まで引き下げられるとみる向きもあり、ドル安が続くと金は再び1,000ドル台に上昇することになりそうだ。
GFMS報告で年内1,100ドル突破が予想される
貴金属調査会社ゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ(GFMS)は9日、世界の金市場の調査報告「ゴールド・サーベイ2008」を発表した。同社のフィリップ・クラブウィック会長は、「前回の上昇のスピードはやや持続不可能と見られていたことから、この数週間の間に市場が大幅な調整を示したことは、我々としてはまったくの予想外ではない。しかし、現在の調整が相場上昇の終わりとは考えていない。投資家などによる相場の押し上げの背景にあった材料の多く(米ドルの下落、金融不安)は、まだ続いている。しかし、相場の天井の予想は難しい。年内には1,100ドルは達成可能と見られるが、1,200ドルはやや難しいだろう」と説明した。
GFMSが「根拠なき熱狂」と警告する理由の一つは、鉱山生産と金の主要な需要である宝飾需要とのギャップが拡大していることであり、このギャップは以前の100トン以下から今年は約500トンに拡大する可能性がある。同報告では、長期的には相場の均衡点が600ドル付近になると予測している。
同報告では2007年の金市場において、投資家と宝飾部門の相互関係がどのように価格に影響したかを説明している。9月以降の相場上昇の主因として、投資資金が、ETFに流入し、現物・先物市場などに配分されたことが指摘された。GFMSは、この相場上昇の背景となる主因の1つを説明するうえで、この(資金の)移動先の性質は有益であると考えており、クラブウィック会長は「銀行の信用が大きな打撃を受けた。また米国のリセッション(景気後退)やインフレ再燃、その他に直面するなか、既存の資産の安定性に対し、多くの者が疑問を投げかけた」と指摘した。また、他の強気要因として、米ドルの下落や金利低下、地政学的リスク、原油高が指摘された。
2007年の需給概要
供給面
鉱山生産は0.4%減の2,476トン。中国が33.3トン増の280.5トンとなり、南ア(269.9トン)を上回り、世界最大の産金国となる。南アでは鉱石の品位が低下、鉱山事故で安全性確保のために一時的に操業を停止したことなどが主因となって生産が減少した。北米や中南米でも減少。キャッシュ・コストは25%増加。コスト増加は操業を抑制する要因であり、今年の生産は横ばいとなる見通し。
公的部門の売却は30%増の481トン。欧州の金協定による売却が通常の水準に戻ったことが主因。今後はIMFの売却が認められ、増加する見通しだが、米議会の承認を得るまで時間がかかるとみられる。
二次供給は15%減の956トン。金の先高観が強まったことが主因。
需要面
宝飾需要は5%増の2,401トン。上半期は22%増となったが、第4四半期に20%減少したこと(下半期は9%減)で伸び悩む。インドは価格上昇の影響を大きく受けたが、中国は年間を通じて需要堅調だった。今年は価格上昇で200トン以上急減する可能性あり。
欧米の退蔵需要は158トン(2006年404トン)に急減。OTC市場で売却され、現物やETFへの資金流入による需要増加を相殺する。現物やETFへの資金流入は第4四半期に急増。今後の投資需要は堅調が見込まれ、2008年後半か2009年前半まで続く見通し。
鉱山会社のヘッジ外しは9%増の446トン。上半期に集中した。
東海林 勇行(しょうじ ゆうこう)
1997年ゼネックス(現オーバルネクスト)入社、貴金属を中心に国際商品の市況、分析記事を執筆。外部向け原稿の執筆、セミナーなども行う。ブルームバーグ、マーケットウィナーズ(BS JAPAN)、ラジオNIKKEIなどに出演。

