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米経済が本格的に不況になる?
(株)日本トーマスモアコンサルティング 代表取締役 板垣哲史氏
2008年3月21日更新
原油高騰が続く中、米国経済がリセッション(景気後退)に陥るのは避けられないという論議が盛んになってきている。為替の動向となるドル安とカップリングしているわけではないが、サブプライム問題に発した米国経済の先行きがどうなるかについては、全ての国々にとって、極めて関心の深いことである。
一般に、経済成長の高い国の通貨は、強くなり、経済成長率が下がったり、マイナスに落ち込んでいると判断される国の通貨は、弱くなる傾向がある。また経済状況がそこそこならば、より金利の高い通貨が買われやすくなる。こうした意味で米国経済の先行きに対する懸念が、今、市場の動向を支配し、ドル安が進行しているわけである。
米国経済状況がリセッションに落ちいったのではないか、という疑念があるが、そもそもリセッションとは、国内総生産(GDP)の減少など、経済活動が不振になることで、通常の景気循環内での穏やかな減衰期を意味する。
米国では、具体的数値として実質国内総生産(GDP)が、2期以上、連続してマイナスの成長率となることを言う。米国連邦準備銀行(FED)としては、2007年第3四半期のGDPが前期比年率プラス0.6パーセントであり、まだGDPはマイナスでない事から、リセッションの認識はなく、この1-3月期のGDPの成長率が4月に発表されたとき、マイナス成長が確認されるといよいよ本格的に対応策が講じられることになろう。
また、米サプライマネジメント協会(Institute for Supply Management)が発表する米国のISM製造業景気動向指数においては、50が景況感の分かれ目で、この数値が高いと、アメリカの景気が好調であるといわれ、41.1まで落ちるとリセッションと定義づけられる。過去の金利引上げ打ち止めは、この指数が55以上上がり、これを下回った時期に行われている。
今年1月発表のISM製造業景気動向指数は、42.7まで下げ、1月の米公定歩合が3パーセントまで一挙に下がる誘引となったが、2月発表のISM製造業景気動向指数は、48.3まで戻したことにより、為替もその後、乱高下した。ISMにはもう一つISM非製造業総合指数というのがある。先週2月の分が発表になったが、49.3と予想の47.0を上回る数値だった。1月の数値44.6と比べても、景気が良いという数値である50までは届かなかったが、この数値を受けて円に対してはドルが上昇するきっかけとなった。
本格的リセッションは、これから始まる可能性が高いということになるが、言い換えるなら、まだまだリセッションに突入しているわけではない。 さて、もっと深刻な景気停滞の状況をディプレッション(不況)というが、これは、リセッション状態が長引き、マイナス成長が3期以上続き、長期化し、好景気と好景気の間の深い谷間が長く続くことをいい、直近では、同時多発テロが起きた2001年には、GDPが-1.4パーセント、ISM製造業景気動向指数が42.7まで落ち込み、公定歩合が6.5%から1.75%まで下げたときまでさかのぼる。
この状況になったら、サブプライム問題も不動産の下落の進行で、さらに深刻化することから、経済評論家たちも、口に出した時の影響を恐れて、この言葉を出すのは慎重である。
さらに言葉の問題だが、景気停滞下での不況は、スタグネーションといい、現在のように、原油価格、商品価格が高騰し、インフレーションが進行しつつある中で、不況が続くことになった場合は、スタグフレーションという。
かつて1980年代におきたオイルショックのときは、一時的に激しいスタグフレーションが起きたが、このときは、OPECによる政治的戦略が原因であり、寝耳にウオーターだったために対応が遅れたのが原因であった。
しかし今回の場合は、サブプライム問題が契機であり、ヨーロッパや日本は省エネ対策意識が高揚していることもあり、アメリカが本格的に不況に突入したなら、需要が減少し、原油価格などがタイムラグを経て下落する可能性もあるのではないか。
いずれにせよ、今後暫らくは、米国の経済指標には十分注意を払わなければならない。
為替も、日本の国内政治、経済状況を見る限り、経済の強さを示す一つの指標である円高がいつまでも続くはずが無いのである。
板垣哲史(いたがき てつふみ)
(株)日本トーマスモアコンサルティング(国際経営人事コンサルタント会社)代表。慶應義塾大学法学部卒業 同大学大学院卒業。外資系金融機関の国際金融部門において20年間以上にわたり国際金融市場の最先端で活躍した。その経験の中から、金融機関の専門職を対象として投資心理学を応用した収益力判定テストを開発し、自己目標明確化の為のカウンセリング、転職紹介で数々の実績を積み上げてきている。また為替動向分析を中心とした国際金融情報(グローバル・レビュー・レポート)を定期に発行し、最先端のベンチャー企業育成のコンサルタントとしても活躍中。著作に『決定版 儲かる米ドル預金』(マネジメント社)、『眠ったお金を揺り起こせ』(ブロンズ新社)、『投資に勝つ最強の「心理」法則』(オーエス出版)、『金と考える分散投資』(文芸社ビジュアルアート)などがある。


