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「アルミは製錬コスト上昇による採算悪化で生産抑制の可能性」

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主任研究員 芥田知至氏

2008年2月8日更新

アルミニウム相場は他の金属市況と同様に需給がやや緩和していることから弱含み傾向で推移しているが、供給面で中国の製錬事業のコストにかなり近づいてきていると見られ、下値余地は限定的であると思われる。

需給関係を概観すると、まず需要面では日米両国での住宅関連向けが顕著に落ち込んでいることが需給緩和の最大の要因となっている。米国ではサブプライム問題もあって景気が急速に悪化してきたが、とくに住宅バブル崩壊から住宅分野の落ち込みが著しい状態だ。また日本でも改正建築基準法が施行されたことで、住宅投資がかなり減少している。その一方で、新興国では高成長が続いているだけに引き続き需要が旺盛な状態にあり、とくに中国では固定資産投資が大きく伸び続けていることから需要がかなりの増加傾向を継続している。ただ、総じて先進国での減退から、世界的に見ると需要はここにきて伸び悩み気味となっている。

これに対し、供給面では引き続き大手製錬メーカーを中心に生産が安定している。ところが、中国では中小メーカーが多く、いまのところまだ採算がとれているとはいえ、エネルギー価格の高騰による電力料金の引き上げを背景に製錬コストが上昇していることから、これ以上市況が下がると採算面で生産を続けるのが難しくなってくる可能性がある。政府は政策的に電力料金を引き上げて製錬会社を淘汰・再編していこうとしているため、中長期的には生産が抑制されることになりそうだ。

市場では、現状においては日米で住宅需要が著しく減っているなかでサブプライム問題が引き起こされたこともあり、悲観的なムードが高まっているが、市況は株価ほどには下げておらず、見方によっては底堅さが感じられるともいえる。日本での住宅関連向けの需要の大幅な減退はあくまでも特殊要因によるものであるだけに、これから回復に向かう公算が高い。また中国では足元では旧正月を迎え、その後も8月の北京五輪の開催に向けて需要が盛り上がる可能性がある。ただ、米国では景気自体は足元の1−3月期が最悪期にあり、これから徐々に回復してくるとしても、住宅市場の停滞は今後も長期にわたり続く可能性が高いのが気になるところだ。

他方、ニッケル相場は07年5月上旬に1トン当たり5万ドル台(LME3ヵ月物)を記録するまで高騰してから急反落したが、その背景にはニッケルの主用途であるステンレスの買い控えが起こったことがある。ステンレス鋼の需要は同年7−9月期に大幅に落ち込み、おそらく10−12月期もさらに減少したと思われ、それに伴い、原料のニッケルの需要も減ったものと想定される。ステンレス鋼の需要が落ち込んでいるのは、日米での住宅関連向けや米国での自動車産業向けが不振なことがある。さらに、本来、新興国や資源国ではステンレスの最終需要は好調なはずだが、ユーザーや仲介業者が値下がり期待が強いことから発注を見合わせている。それにより生産が極端に落ち込んでいることから、ニッケルの在庫も増えている。

ところが、こうした状態が長続きするはずがなく、その反動から発注が回復してくることで需要が増加し、ニッケルの在庫も減っていくだろう。足元は非常に不透明感が強まっているが、4−6月期までにはステンレス鋼の需給が引き締まる兆しが出始め、ステンレス減産の一巡の動きから値下がりしたニッケルに対する引き合いも増えていくと思われる。


芥田知至氏
芥田知至(あくた ともみち)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒。青山学院大学国際政治経済学研究科修了。山一證券入社後、山一証券経済研究所経済調査部、NY事務所を経て98年に三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)入社。調査部にて米国経済、ラテンアメリカ経済、日本経済を担当した後、現在は国内経済・商品市況などを担当。各種メディアに寄稿・コメント提供多数。著書に『知られていない原油価格高騰の謎 』(技術評論社)などがある。