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「2008年の原油相場は100ドル超えで推移する可能性大きい」

丸紅経済研究所 所長 柴田明夫氏

2008年1月11日更新

原油相場はこれまでも米国内での慢性的な精製能力不足からガソリンを中心に製品市況が高騰していたことや、地政学的リスクの高まりから上昇傾向を続けていた。ところが、とくにサブプライム問題から信用収縮懸念が高まった直後の07年8月下旬以降、ドル不安から投機資金が流入して一気に20ドルも高騰した。今後もこの問題からドル不安や株価の混乱が続けば再び買い上げられていく可能性が高まっている。08年前半にかけて株価の調整が続き、FRBもあと1〜2回は利下げを続ける公算が高まっていることからドル安継続観測が払拭されないだろう。しかも、春になると米国では夏場のガソリンの需要期に向けて在庫積み増しを行っていく時期を迎えるが、精製能力不足のなかで環境規制の問題もあって容易に在庫を積み上げるのが困難なことから、時期的に製品市況が高騰しやすい時期を迎えることも原油相場を押し上げる要因になってくる。それにより、08年には100ドルを超えてさらに高騰していく可能性が高そうだ。

一方で、原油の在庫は米国をはじめ先進国では高水準で推移しており、在庫日数との関係でいえば、現在の市況の適正水準は40〜50ドル程度になるといった議論が根強い。だとすれば、足元では市況が90ドル前後で推移していることから、投機資金で40〜50ドルほど買い上げられて上乗せされていることになる。ただその中身を要因分解すると、確かに狭義の意味での需給ファンダメンタルズの観点からは50ドル程度が妥当な水準なのだろうが、そこには2〜3年後の将来の需要の伸びを見据えた“準ファンダメンタルズ”とでもいい得る要因が上乗せされている。しかも、原油だけでなく多くの素材市況が高騰したことで生産コストが上昇していることもあり、投資不足傾向にさらに拍車がかかっている。それにより、原油においても川上部門の油田探査の段階での投資が抑制されているため、供給不足傾向が続いていることがさらに準ファンダメンタルズの部分を拡大しているといえる。

そして、市況構造の“最上層”の部分によくいわれている地政学的リスクが上乗せされているのであり、いわば、足元の原油相場の水準はかなりの部分が将来的な需給の推移を織り込んでいるという意味で、それなりにファンダメンタルズを反映したものということができる。このため、経済・金融環境が変化することで投機資金が流出すれば大きく下がるといった議論は的を射ておらず、今後も原油相場は下げにくい状態が続くと予想される。

こうしたなかで注目されるのは、供給面で大きなカギを握るOPECの動向が、以前には市場を沈静化させるために増産に前向きな姿勢が見られたものだが、現在では増産を見送り、最低1年間は市況の動きを市場に任せるといった姿勢に転じていることだ。さすがに8月下旬からわずか2ヵ月間で20ドルも上昇したので、一般的には“マネー・ゲーム”によるものといった認識が強い状態だ。そうでなくても、OPECは市況高騰の原因は米国を中心とする消費国での精製能力が不足していることや投機的に買い上げられているためであり、決して供給が不足しているわけではないといった姿勢を示していたが、そうした認識がさらに強まることで一段と増産に否定的な態度を強めている。それにより市況はさらに下支えられることになり、投機的に買い上げられやすい状況をもたらしている。

もとよりグローバル規模でかなり過剰流動性の状態にあるなかで、サブプライム問題への対処からECBやFRBが大量の流動性供給に動いており、さらにFRBは積極的に利下げを推進する姿勢を見せているので、過剰流動性にさらに拍車がかかっている。こうした状態では投機的に買い上げられやすい状態がしばらく続くと思われるため、原油相場は100ドル突破を試す展開になり、この水準での定着を目指す展開になってもおかしくない。


柴田明夫氏
柴田明夫氏(しばた・あきお)

1976年東京大学農学部卒業後、丸紅株式会社に入社。鉄鋼第一本部、調査部を経て、2000年に業務部(丸紅経済研究所)産業調査チーム長。02年に同研究所主席研究員。03年から同副所長。06年から現職。経済企画庁「環境・エネルギー・食料問題研究会」委員、農林水産省「食料・農業・農村政策審議会」臨時委員などを歴任。近著に「資源インフレ−日本を襲う経済リスクの正体」日本経済新聞社。