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「金は一段と高騰し1000ドル台に到達する可能性あり
東証の金ETF上場やドル不安の高まりなど、強材料は目白押し」

マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表 亀井幸一郎氏

2007年12月28日更新

2007年前半の金相場はおおむね600ドル台後半でレンジ内での動きとなったが、9月に入ると高騰し、11月8日には848ドルの高値をつけて史上最高値に迫る水準に達した。8月半ばにかけてサブプライム問題から金融・資本市場が動揺したのを受け、ECB(欧州中央銀行)やFRB(連邦準備<制度>理事会)が流動性供給策に動いたことにより欧米の大手金融機関を巻き込んだ「信用リスク」の上昇が長引き、株式市場などから投機資金が金市場へとシフトしたことによるものだ。また、一連の政策により将来的にさらにドル安が進むといった観測が強まったことも、原油相場の上昇とともに市況を押し上げる強力な支援要因になったといえよう。

さすがに2ヵ月あまりで200ドル近くも上げたので短期的に調整局面に転じたのは致し方ないが、それでもドル安観測が根強いなかで、中長期的にさらに上昇していくとの見方に変わりはない。昨今の市況高騰の大きな原動力とされるカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)等の年金基金については、その多くが1月と7月に運用資産の組み換えを行うところが多いため、組み入れ比率決定に伴い、08年早々にもETF(上場投資信託)を介した買いが見られるのではあるまいか。サブプライム問題による信用収縮懸念が長引いているだけに、その段階でファンドの買いを誘発することも考えられる。

年金を主体とする金ETFの残高は現在では800トンに上っているが、このペースでいくと、08年には1000トンを超えてくることになりそうだ。いよいよ東京証券取引所にも上場されることで、日本の年金がどの程度金を買ってくるかが08年には大きな焦点になることは間違いない。世界でも群を抜く高貯蓄国の年金資金が金市場に参入してくれば強力な支援要因になる。

これまで、日本の個人資金は国内での超低金利を嫌って投資信託や為替証拠金取引を通じて海外に流れていたが、07年9月30日に施行された金融商品取引法に伴う現場の混乱で投資信託全般への資金流入が細っている。また8月半ばや11月に急激な円高・ドル安に見舞われたことで、為替証拠金取引を行っていた投資家がかなり傷ついたことが知られているが、今後も主要通貨に対するドル安が進む情勢のなかで、サブプライム関連の損失が一般的な投信の運用資産にまで影響が広がるならば、国内個人投資家の間でも信用リスクのない資産としての金への関心はこれから一層のこと高まるものと見られる。その起爆剤として東証の金ETF上場が期待されるところである。

米国ではサブプライム問題による信用収縮懸念が長引いており、外国為替市場でもドル安圧力が強まっている。このサブプライム・ローンは06年前半に設定されたものが多いだけに、それから2年を経た08年前半にローンを支払えなくなる人が急増し、延滞率が飛躍的に上昇することが懸念されている。

この問題がピークを過ぎても、オルトAやジャンボといった他の住宅ローン債権にも焦げ付きリスクが波及し始めており、これから破綻するところが続出する恐れがある。さらには優良顧客向けのプライム・ローンについても、インフレが顕在化して長期金利が上昇すれば焦げ付きリスクが顕在化する恐れが高まるが、現時点でもすでに自動車産業が集積しているデトロイトのような地域では、業績悪化による賃金の低下から一部で支払いが滞っているものが見られ始めている状況だ。

このような状況下においては、FRBはしばらく利下げを継続せざるを得ないだろう。08年春ごろから前半で利下げは打ち止めとの見方もあるが、これは足元のサブプライム問題が年半ばには遠のくことを前提にしたものだ。しかし、基本的に住宅バブルが崩壊過程にあるなかで、他の住宅ローン債権に焦げ付きリスクが波及していくことで金融・資本市場の動揺がそれ以降も続くようだと、年間を通して利下げが続く可能性もあり得る。

しかも、08年には米国では大統領選挙が行われるが、選挙戦を圧倒的に有利に進めている民主党は労働組合を支持基盤としているだけに保護主義的な傾向が強い。米国経済は住宅価格が下がり続けているなかで従来のように個人消費に牽引力がなくなっているため、経済成長の原動力を外需に頼らなければならない状態だ。それだけに、政策的にもドル安誘導路線が採られやすいという見方が市場で生まれることも金市場をサポートすると見て間違いない。

さらに注目されるのは、住宅バブル崩壊の問題を解決するには問題債権を何らかの機構が買い取る以外に方法がないと思われるが、そこではファニーメイ(米連邦住宅抵当公社)やフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)が買い取り枠を増やすことで対処する可能性があることだ。だとすれば、もとよりこれら準公的金融機関は資産内容が劣化していることが危惧されているなか、さらに問題債権を大規模に買い取らせることになるので、両行が発行している機関債が著しく毀損することになりかねない。そうなれば信用不安が強まり、ドル急落リスクが顕在化する可能性もなくはない。

金相場を刺激する環境がこれからも継続され、さらに拍車がかかることすらあり得ることはこれまで述べてきたことから明白だ。ドル安が進むだけでなく、過剰流動のなかで、さらに緩和的な金融政策が推進されることは金相場の上昇傾向を一段と持続させやすくすることになる。相場が再上昇に転じれば、80年1月21日に記録した875ドルの史上最高値をあっさり超え、08年中には1000ドル台に達する可能性があることも否定できない。


亀井幸一郎氏
亀井 幸一郎(かめい こういちろう)

中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、87年マネー・マネジメント・インスティチュート(MMI)入社。92年ワールド ゴールド カウンシル(略称WGC/本部ロンドン)入社。企画調査部長として経済調査、マーケット分析に従事。98年同社退社、執筆、講演などの活動を開始。現在日経CNBCテレビにて日経CNBCエキスプレス「グローバル・ウォッチ」にレギュラー出演中。また住友金属鉱山サイトでのメールマガジン、日経マネーにて金市場「マーケット詳解」を連載中。