最新レポート
「天然ゴム産地のゴム農園と工場を訪ねて」
商品ジャーナリスト 小針 秀夫氏
2007年11月30日更新
11月上旬に天然ゴムの産地であるベトナムとタイのゴム農園とゴム工場を視察する機会を得た。東工取先物市場振興協会が主催する「ゴム産地研修視察」に参加できたためだ。今回の視察の特徴は、世界最大の天然ゴム生産地であるタイだけではなく、最近、天然ゴムの生産が伸びているベトナムのゴム工場と農園も視察することができたことであり、極めて有意義なことだった。
■ベトナムのゴム工場と農園「DAU TIENG RUBBER」
ベトナムのゴム工場「DAU TIENG RUBBER」を訪れたのは11月5日のことだった。場所はダウンティエン。生産工場は3カ所にあり、ここでは1万8000トン/年の生産キャパがある。その他のところでは、ロングホンで1万2000トン/年、プービンで1万5000トン/年、3カ所の合計で4万5000トン/年が基本的な生産可能量になっている。生産実績は、2006年は価格が高値をつけたことから生産意欲が高まり、年間で生産能力を上回る4万9000トンが生産され、今年2007年は生産能力と同水準の4万5000トンが予定されている。来年2008年は4万1500トン程度の生産にとどまる見通しである。来年の減産見通しの背景には、古いゴム樹木の多くが伐採されることから、これによって生産が可能となる農地が少なくなることがある。
この工場で生産されているゴムのグレード(分類)は「SVR3L」である。SVRはStandard Vietnam Rubberで、3Lの3はゴミの含有率が100分の3であることを示し、Lはライトカラー=明るい色調であることを表している。つまり、最高級のハイグレードゴムであるということだ。SVRはブロック状ゴム(TSR=テクニカル スペシィファイド ラバー)を示し、SVRはベトナム産、SMRはマレーシア産、SIRはインドネシア産、STRはタイ産を示す。これまでさまざまなブロック状ゴムを見てきたが、最も美しいブロックゴムだった。またゴム特有の臭いもほとんどない。直接、綺麗なラテックスから製造するという独特の生産方式のためか、極めてクリーンである。
次に訪れたのは「DAU TIENG RUBBER」が保有するゴム農園である。農地は2万9000ヘクタールもあり、その内の2万3000ヘクタールでゴムの生産が可能だという。残りは、まだ若木かメンテナンス中の農地だとのことである。ゴム樹木の生産サイクルは、新しく植え付けしてから7年間は生育し、それからタッピングと呼ばれる採液作業が可能となる。タイやマレーシアがそうであるように、それから約20年間は生産されることになる。植えつけられているゴム樹の品種は、一般的だったRRIM600をベースにして様々な品種改良が重ねられ、現在はGT1やPB235が主流になっているとの説明だった。実際に見せてもらったゴムの苗木は、実験的な新しいクローンが植えられていた。たまたま見学させてもらったゴム農園ではRRIV4やBM515などベトナムゴム研究所で品種改良された新ゴム種が植えられているとのことだった。
参考までに、ベトナムの天然ゴム生産は、タイ、インドネシア、マレーシア、インドに次いで世界第5位の生産国である。現在のベトナムの年間天然ゴム生産量は50万トンの大台を超え、55万トンに迫っている。
■タイのゴム工場と農園「THAIHUA RUBBER PUBLIC」
タイではラヨーンにあるゴム工場を訪れた。ここ「THAIHUA RUBBER PUBLIC」は、タイ国内の数あるゴム工場の中で中堅クラスではあるが、ゴム農園とTSR、RSSの2つのゴム工場を有している他、ラテックスの加工工場(ゴム手袋工場)も保有している。
ゴム農園では、タッピングの実際の作業を見せてもらった。この地域のウィンタリング(落葉期)は例年2〜4月で、ハジャイなど南部の3〜5月と比較すると約1カ月早く始まるという。またタッピングは深夜1時から2時前後に行われ、これを朝方の6時前後に集荷するという。今年の場合は、全般に雨が少なく、それが減産につながっていると説明された。またここで植林されているゴム樹の多くはRRIM600で、マレーシアでかなり以前に開発された古いタイプのハイ・イールド・クローン種が植え付けられている。
ゴム工場は最初にRSS工場へ案内された。よく整備された工場内は、同じ赤いユニフォームを着て働く若い女性がほとんどだ。力作業を必要とする部署だけ男性が働いている。その多くは、ラオスなど近隣諸国からの出稼ぎ労働者である。1日の労働賃金は185バーツ(日本円で約600円程度)である。更に、RSS工場を見学した後は近いところに隣接してあるTSR工場も見学した。一般的なTSR工場であるが、主力のSTR20の他に、あまり見たことがない STR10なども在庫として積まれていた。最後に案内してもらったのがラテックスの加工工場である。ここではゴム手袋が生産されている。人間の手をした型取りが数十個も機械に取り付けられ、流れていき、ラテックスがたまっているボックスの中に次々とひたされていく。すると、ラテックスがついた型取りが薄い膜を張り、それが手袋の形になっていく。ほとんど全てがオートメーション化され、最後に手袋が取り外されるところだけ、人間の目でチェックされて、不良品と見られるものだけがはじかれる流れ作業となっている。
タイは世界最大の天然ゴム生産国であり、その動向は天然ゴム市場にとって大きな価格変動要因となっている。タイのゴム生産は1995年以降の10年間は、年率で約7%の高い伸び率を示し、2004年には298.4万トンに達して300万トンに接近した。しかし、2005年は293.7万トンと若干減産となり、2006年も300万トン以下にとどまる可能性があったが、最終的に313.7万トンとなり初の300万トン台を記録した。今年の月別の生産推移は前年比でややプラス気味で推移しているが、足元の生産量や集荷量が天候要因などで増えていない点は重視されている。タイの3カ所にある中央ゴム市場で集荷されている原料ゴムの数量がこのところ記録的に少ない状況であり、それにより今年のタイの天然ゴム生産実績が再び300トンを割り込む可能性があるとも推測されている。
小針 秀夫(こばりひでお)
11985年 東京商品新聞社編集部入社。1988年 商品市況研究所編集部入社。2000年 トーキョー・トレーダーズ・タイムズ社代表取締役。
情報配信専門会社として一次情報を通信社や新聞社、シンクタンクなどに情報提供する業務に携わる。
商品ジャーナリストとして石油、貴金属、穀物、ゴムなどの分野で多岐に渡る取材ソースを持つ。

