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「金は投資資金流入で上値を試す」
株式会社オーバルネクスト 東海林勇行氏
2007年11月2日更新
東京貴金属は10月に入り、先限ベースで金が1984年10月以来の高値2,907円、白金が上場来高値5,284円を付けた。金は米国の景気減速懸念による追加利下げ観測を背景にドル安見通しが強いことに加え、地政学的リスクの高まりによる原油高などを受けて投資資金が流入したことが支援要因になった。またUBSとシティグループなど大手金融機関が金価格の見通しを引き上げ、長期的な先高観が強いことも金買いを促した。一方、白金は南アフリカの電力不足や鉱山の落盤事故で供給不安が高まったことも強材料視された。ただ米大手銀行決算で米サブプライムローン(信用度の低い借り手に対する融資)による損失が巨額なものとなり、サブプライム問題に対する懸念が再燃したことや、7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の共同声明で景気減速見通しが示されたことを受けて株価が急落し、リスク回避の動きが出ている。商品市場にもその動きが波及すると8月のような調整局面が警戒される。
ファンド筋の金買いは過去最高
米商品先物取引委員会(CFTC)建玉明細報告によると、ニューヨーク金のファンド筋の買い越しは10月16日現在で20万1,859枚に増加した。2005年10月11日現在の17万7,410枚を上回り、2週連続で過去最高を更新した。また世界10カ国に上場されている金ETF(上場投資信託)の現物保有高は10月19日現在で725.72トンと過去最高を記録した。10月に入ってから約20トン増加し、資金流入が続いている。金ETFに流入している資金は年金基金など長期投資目的の資金であり、価格が下落しても見通しに変わりがなければ買い方に居座る傾向にあり、ここから資金が流出しないかぎり、金価格が大幅に下落することはないとみられる。一方、ニューヨーク金など先物市場におけるファンド筋の資金は短期運用目的の資金であり、弱材料が出たり、テクニカル面が悪化したりするとすぐに手じまわれる傾向にある。今回はリスク回避の動きが弱材料視される可能性がある。ちなみに2005年10月にピークを迎えたファンド筋の買いは約1カ月後に12万3,111枚に減少した。今回、ファンド筋の買いが過去最高を更新し、短期的に買われ過ぎであり、再びファンド筋に買い上げられるには買いが15万枚前後まで減ることが必要とみられる。
金1,000ドルの可能性も
UBSとシティグループは金価格(年間平均)の見通しを引き上げた。UBSは2008年が760ドル(前回650ドル)、2009年700ドル(同550ドル)と予想した。価格上昇にもかかわらず、宝飾需要が堅調なことに加え、投資需要の増加を指摘した。シティグループは2008年が750ドル、2009年が800ドル、2010年が820ドルと予想した。年内に850〜1,000ドルを試す可能性があり、2008年序盤に調整局面を迎える可能性があるとしている。
白金は南アの供給不安が強材料に
白金は今年に入ってから欧州各地でのETF上場、主産国である南アフリカの鉱山会社でのストライキに対する懸念(その後に労使交渉はまとまる)などを受けて上昇した。米サブプライム問題に対する懸念をきっかけにファンド筋の利食い売りなどが出て夏場に調整局面を迎えたが、10月に入ると、南アの電力不足に加え、落盤事故による坑道や鉱山の閉鎖で再び供給懸念が台頭し、再び上値を試している。
世界最大の白金鉱山会社アングロ・プラチナム(アングロプラット)は11日、南アの電力不足によって精錬所2カ所(ルステンバーグのウォーターバルとモーチメル)が影響を受けていることを明らかにした。同国の電力会社エスコムは電力不足に関して、季節外れの気温低下や降雨で電力需要が増加したことを指摘しており、一部工場にメンテナンスや電力削減を要求した。またルステンバーグ鉱山で落盤事故による死者が出たことを受けて17〜18日には同国の鉱物・エネルギー省の指示で3カ所の坑道が閉鎖された。これらの坑道は同鉱山の鉱石約40%を生産しており、閉鎖が続くと1日当たり約40キログラムの白金の生産ロスにつながるという。またノーザムの鉱山も閉鎖されており、安全性が確認されるまで同省は操業再開を許可しないとみられる。
白金需給のバロメーターとなるリースレート(貸出金利)は今年に入ってから目立った動きは見られなかったが、南アの供給不安が高まったことをきっかけに昨年11月以来の水準に上昇した。昨年11月はETF上場のうわさが広がったことを受けて売り方がいっせいに現物手当てに動いたため、リースレートが急上昇したが、手当てが一巡すると以前の水準に戻った。今回は鉱山生産が減少する可能性があるなかでの上昇であり、リースレートが以前の水準に戻らなければ白金の支援要因になるとみられる。
東海林 勇行(しょうじ ゆうこう)
1997年ゼネックス(現オーバルネクスト)入社、貴金属を中心に国際商品の市況、分析記事を執筆。外部向け原稿の執筆、セミナーなども行う。ブルームバーグ、マーケットウィナーズ(BS JAPAN)、ラジオNIKKEIなどに出演。

