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幾度となく流動性危機や信用収縮危機が再燃しドル安が進みやすくなる
「ECBはインフレ抑制姿勢を重視する姿勢を崩さずユーロ高傾向も不変」
第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 嶌峰義清氏
2007年10月19日更新
ドル・円相場は9月の米雇用統計で非農業部門の雇用者数が前月比11万人増加となり、7、8月分についても上方修正されたことから、FRBによる利下げ期待が薄れていることを背景に強含んでいる。しかし、期待が後退しているとはいえ信用収縮問題から再び米金融・資本市場が動揺するとの懸念や、それにより実体経済が悪化する危険性がくすぶっているため、金融緩和期待も根強い状態にあることも変わっていない。
その一方、日本の絶対的な超低金利状態も不変であるため、これからも以前ほどの勢いはなくても円キャリー取引が活発な状態が続くことで、国際金融・商品市場は活況を呈した状態が続くだろう。それにより円安圧力が根強く続く一方で、世界的に株価が高騰すれば金利正常化を目指している日銀としても追加利上げを模索しやすくなるため、1ドル=118円を超えてさらに円安が進むことは想定しにくい。年末から福井総裁の退任が近づく2月にかけて、日銀が利上げに動く可能性が高まるにつれて円相場は強含み気味に推移していくのではないかと見られる。
市場の注目はやはり米国の信用収縮不安がいつまで続くか、またそれに伴うFRBの利下げの行方に集まるだろう。当面、8月半ばにピークを迎えた危機の局面ではECBやFRBが迅速に流動性の供給に動き、またFRBは8月17日に緊急に公定歩合を0.5%、さらに9月18日にはFFレートも0.5%引き下げるなど素早く政策対応に動いたことが奏功して小康状態を取り戻しつつある。
しかし、基本的にサブプライム問題は住宅バブル崩壊の初期段階に過ぎず、これからサブプライム・ローン自体の延滞率がさらに上昇するのに加え、中期的にはオルトAやジャンボといった他の住宅ローン債権にも焦げ付きリスクが波及することで、幾度となく流動性危機や信用収縮危機が再来して金融・資本市場が大激震に見舞われておかしくない。それにより米国で利下げ期待が何度となく高まることでドル安が進みやすくなり、実際に危機に見舞われた際には再び急落する場面も到来するのではないか。さしあたり、FRBとしては金融・資本市場や金融機関、ヘッジファンドの決算の動向とともに、年末のクリスマス商戦での消費の動向を見極めようとしていると思われる。もし消費活動が思わしくなく、実体経済に悪影響が及んでいることが確認されれば、年明けに利下げに動いてもおかしくない。
ユーロ相場については、これまで急激に上げてきたなかで、フランスの経済閣僚を中心にユーロ高を懸念する発言が出てきていることもあり、19日からのワシントンでの先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の開催を控えて調整局面を迎えている。とはいえ、基本的にECBはインフレ抑制姿勢を重視する政策姿勢を容易に崩さないと思われるため、ユーロ高傾向は変わらないだろう。ただし、ここにきてドイツを中心に景気指標が思わしくないものが目に付くようになっており、実際にはインフレ圧力は緩和されつつあることから、足元の調整局面が一巡すれば、これからは当局が利上げを再開するのかを試す意味でもう一段高のユーロ高に向かうと思われる。
嶌峰義清(しまみね よしきよ)
青山学院経済学部卒。1990年岡三証券入社。岡三経済研究所、日本総合研究所、日本経済研究センター等を経て、98年5月より現職。現在は金融市場全般担当のチーフ・エコノミスト。現在、角川SSコミュニケーションズ月刊誌「MONEY JAPAN」にてグローバルマーケットの連載をはじめ、さまざまな経済誌に執筆。

