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「潤沢な暖房油在庫に市場の関心が向けば反落へ
 ドル暴落によるドル建て価格のインフレ圧力を織り込んで上昇している可能性も」

第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 嶌峰義清氏

2007年9月21日更新

原油相場は8月1日に78.77ドルとわずかに史上最高値を更新して反落していき、21日には70ドルを切ったが、それから再び上昇している。史上最高値を更新するまではガソリン市況が牽引していたが、現在ではそれに代わって在庫積み増し期に入った暖房油市況が追随高となっている。

もっとも、夏場までのガソリンとは異なり、暖房油については在庫が潤沢な状態にあるため、本来ならそれほど上昇力が強まることはないと思われたものだ。しかし、実際には週間ベースで高水準だった原油の在庫が、製油所の稼働が復旧したことで減少しており、そこにOPECも9月11日の定例総会で多くの加盟国が増産に否定的な姿勢を示したことも強材料視されて上昇しているものだ。また、もとより在庫が潤沢であるとはいえ、冬場の需要期を控えて暖房油が在庫積み増し期に入ることも心理的に押し上げ要因になっているのだろう。

8月中旬に信用収縮懸念から下落したのは他のコモディティ市況と同じだが、そうしたなかにあって原油相場は金相場とともにそれほど下がらず、その後目立って上昇してきている点で他の銘柄群とは異なる。その背景には、サブプライム問題が高まったことで米国では住宅バブルが崩壊に向かい始めているなかで、ドル暴落からドル建て価格がインフレ・リスクに見舞われるのを織り込んでいた可能性があるかもしれない。こうしたことは代替通貨としての性格が強い金についてはとくにいえることだが、代表的な基幹コモディティである原油についても該当するのではないか。また原油については、以前に比べると国内世論がイラク情勢の悪化から内向きで反戦志向が強まっているのを背景に米国がイランを攻撃する可能性が遠のいているとはいえ、それでも中東全域がこれから不安定な状況に陥るリスクについても織り込んでいた可能性もあるかもしれない。

こうして見ると、将来的には原油相場は金相場とともにドル安に並行して一段高となる可能性を秘めているといえるが、原油本来の需給関係からはそれほど強気でいる環境にはない。足元ではハリケーンによるリスクに市場の関心が向いているが、それもじきに剥落していくのが避けられないだろう。そうなると、暖房油の在庫が多い状態にあることが見直されてくることになり、それにより市況は下がりやすくなってくると思われる。今回のOPECの定例総会では、大方の予想に反して日量50万バレルの増産が決定されたことも、ある程度は中期的に緩和観を増幅させることになるかもしれない。さしあたり、市況は足元では8月1日の史上最高値付近まで上げてきたが、この水準を超えて80ドル台に乗せても長続きしないと思われ、やがて軟化していくのではないか。ドル安リスクが高まっていることもあって昨年後半のように急落することはないだろうが、それでも米北東部の今冬の気温が例年並みに低下する程度であれば、原油相場は70ドルを割り込んでもおかしくないだろう。


嶌峰義清氏
嶌峰 義清(しまみね よしきよ)

青山学院大学経済学部卒。90年岡三証券入社。岡三経済研究所、日本総合研究所、日本経済研究センター等を経て、98年5月より現職。現在は金融市場全般担当のチーフ・エコノミスト。角川SSコミュニケーションズ月刊誌「MONEY JAPAN」にて、グローバルマネーについて連載のほか、新聞紙上、テレビなどでのコメント多数。