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「金はインドや中国の需要期入り」
株式会社オーバルネクスト 東海林勇行氏
2007年9月7日更新
ここ数カ月間、米国のサブプライム(信用度の低い借り手に対する融資)住宅ローン問題をきっかけに株式市場が大きな調整局面を迎え、金市場でもファンド筋の手じまい売りが出て急落する場面が見られた。ただ機関投資家など長期投資家の動きの目安となる金ETF(上場投資信託)の現物保有高は一時的に若干減少したが、市場に安心感が戻るとともに買われて過去最高を記録しており、金に対する投資意欲は強い。一方、金の季節的要因に注目すると、8月は欧米の市場関係者が長期の夏休みを取るため、夏季の閑散商いとなって流動性を欠ける時期であるが、下旬からは世界最大の金消費国であるインドの需要期入りで実需筋の現物手当てが始まり、秋口からの金相場を占う動きとなる。2000年以降の国際商品全体の上昇で金も関心を集めるようになってからはインド勢の買い付け開始が伝えられるとともにファンド筋の買いが入って価格が急伸するという場面も見られ、この時期はインド勢などの動きを確認する必要がある。
最初に今年の金需要をワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の統計で確認しよう。WGC報告によると、2007年第2四半期の世界の金宝飾販売は145億ドルとなり、前年同期比37%増加し、過去最高を記録した。中国やインド、中東、トルコなど主要市場での増加が目立ったという。また第2四半期に過去最高を記録した背景には、金価格のボラテリティが通常の水準に戻り(第2四半期の金価格は前年同期比6%上昇)、消費者に受け入れられたことが指摘された。トンベースでは675.1トンとなり、同29%増加した。インドでは宝飾・小売ともに過去最高を更新し、トルコでも第2四半期ベースで更新、ロシアでも宝飾需要が過去最高となった。
一方、ゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ(GFMS)によると、2006年のインドの金需要(加工用、スクラップを含む)は628.3トンで世界合計の21.5%を占めた。市場自由化で今後の需要動向が注目される中国と、金宝飾品の製造国であるトルコとイタリアを加えると世界全体の約半分の需要を占めている。
インドの貿易公団(MMTC:Minerals and Metals Trading Corporation Limited)によると、今年度(08年3月末までの1年間)の金輸入は850〜900トンに増加する見通しとなった。前年度の金輸入は739トン。ルピー堅調を背景に今年4〜7月の金輸入は350トンとなり、前年同期比25%増加した。インドルピー(対ドル)は4月の43.5ルピーから7月には40.2ルピーまで上昇(ルピー建て金価格が下落する要因)し、9年ぶりの高値を付けるなど、金輸入を促した。
インドでなぜここまで金が買われるのだろうか? WGCが2006年9月に発表した金のレポート「インドにおける金の役割」で同国における金需要の起源が説明されている。同レポートによると、同国の金需要は文化的・宗教的な伝統に基づいている。同国では全人口の約80%がヒンドゥー教を信仰している。ヒンドゥー教の女神の1人に幸福と繁栄を司る美の女神「ラクシュミ」がいる。ラクシュミは金の船に乗った2頭の像を従え、金の装飾品をあしらった赤いドレスを着ており、手からは金貨があふれている。そのため、金は縁起のよいメタルとされ、フェスティバル時に購入したり、贈り物にされたりする。フェスティバルとして重要なのがヒンドゥー教の新年にあたるダイワリ(燈明の祭り)であり、10〜11月がその時期になる。この時期は農産物の収穫後で最も購買力が高まる時期に当たり、金の需要も強い。また金を買うのに重要な日として、4月か5月のアクシャヤ・トゥリティーヤがある。幸運、成功、繁栄、豊かさを祈る日であり、インド南部のタミルナドゥ州などでは年間を通じて最も金の需要がある。一方、10〜1月、4〜5月が結婚シーズンであり、この時期にも金が買われる。
世界第2位の加工用需要国である中国では2月の旧正月と10月の国慶節が金宝飾品の売上げが好調な時期である。GFMS報告によると、中国の金需要(加工用)は2002年の204.5トンを底にして2006年には269.3トンまで増加した。同国経済の成長によって購買力が高まったことや人気を集めていた白金宝飾品の価格が上昇したため、代替品としてホワイト・ゴールドの売上げが増加したことなどが背景にある。今年の中国経済の動きを見ると、米連邦準備理事会(FRB)がサブプライム問題などを受けて8月17日に緊急利下げ(公定歩合引き下げ)したにもかかわらず、中国人民銀行は21日に今年4度目となる利上げを実施するなど、景気は堅調に推移している。市場自由化で投資需要増加も見込まれており、今後の中国の金需要の行方も注目される。
東海林 勇行(しょうじ ゆうこう)
1997年ゼネックス(現オーバルネクスト)入社、貴金属を中心に国際商品の市況、分析記事を執筆。外部向け原稿の執筆、セミナーなども行う。ブルームバーグ、マーケットウィナーズ(BS JAPAN)、ラジオNIKKEIなどに 出演。


