最新レポート
「今回のドル急落の分析と今後の為替動向」
(株)日本トーマスモアコンサルティング代表 板垣哲史氏
2007年8月10日更新
7月末、本年2回目のドル急落相場となった。2月末日に起きた世界同時株安のあおりを受けて1月29日の122円20銭で円の安値をうろうろした後、一気に115円16銭まで5.8%落ちて以来、円は再びジリジリと値を下げていた。6月22日の124円15銭をピークに7月25日から10日間で117円16銭まで突っ込み後119円台まで戻し、現在に至っている。今回のドル急落の原因は、米国の住宅市況の悪化の噂がサブプライムローンの焦げ付きの増加問題に飛び火し、投資ファンドや金融機関の損失につながるとの懸念が契機となり、米国株式市場の急落を呼び込んだ。さらにその損失をヘッジする為に国際金融機関が、収益が充分であった円キャリートレードを手仕舞いのドル売りを急いだ結果のようだ。まるで『風が吹けば桶屋が儲かる。』の故事のような話である。理由はともあれ為替相場は年に二三回ある日突然急落し、上記のような後付の解釈がされるのが常である。
サブプライムローンの行方が懸念材料であったことがきっかけとなったことは事実であるが、投機筋の思惑から見ると124円という7年ぶりの円安水準では、さすがの円キャリートレードも買値が高すぎて手が出しづらくなり、ドルの買い手が細って足踏み状態のときにこのニュースが引き金になって急落したと見るべきだろう。8月6日に117円16銭まで落ちたが、下げ幅をパーセンテージに直すと、およそ5.6%になることが分かる。この数字は、2月末の急落相場の下げ率にほぼ等しく、明らかに日米の金利差に相当するといえよう。
円キャリートレードとは、高い金利の通貨を買い持ちにし、低い金利の通貨を売り持ちにして三ヶ月以上キャリーするトレーディング手法であるが、儲かるのは、為替レートが購入時以上、円安になる場合である。三ヶ月前の四月の為替レートは117円50銭から118円50銭の動きであった。二月末のドルの暴落から戻して40日経ち、少し落ち着いた頃である。この頃に仕込んだ円キャリーポジションは118円近辺で売り戻せば、利益が残るはずである。とすれば、新しいファクターが出現しない限り、円高トレンドは底を打ったと見てよい。個人の円キャリトレーダーは、この程度の円高では、損切りをしていないようだ。彼らの多くは、持ち値が118円近辺であり、まだ利息分(スワップ益約2円)勝っているはずだからだ。
さて今後の相場展開であるが、前回二月末の急落のケースでは、前半の高値122円20銭を回復するのに78日間掛かっている。この事から推定すると、今年10月18日には124円20銭を回復することになるはずだ。しかしその間200日移動平均レートの119円55銭、戻り半値の120円65銭のバリアがあり、それらを越えるのに一ヶ月以上かかりそうだ。基本的にまだ円安基調と見ているわけは、日本経済の低迷と米国経済の底堅さは不変であり、今後多少金利差が縮まったとしても、圧倒的金利差がある現状では、円安圧力は常に漣のように押し寄せるし、個人の投資家が常に虎視眈々と買いチャンスを狙っているからである。但し、仮に予定通り秋口に、124円を回復したとしても、このレベルからの円売りは再び鈍くなり、結局今年のダブルトップを達成したことから、年末には118円台に戻ることになろう。
板垣哲史(いたがき てつふみ)
(株)日本トーマスモアコンサルティング(国際経営人事コンサルタント会社)代表。慶應義塾大学法学部卒業 同大学大学院卒業。外資系金融機関の国際金融部門において20年以上にわたり国際金融市場の最先端で活躍した。その経験の中から、金融機関の専門職を対象として投資心理学を応用した収益力判定テストを開発し、自己目標明確化の為のカウンセリング、転職紹介で数々の実績を積み上げてきている。また為替動向分析を中心とした国際金融情報(グローバル・レビュー・レポート)を定期に発行し、最先端のベンチャー企業育成のコンサルタントとしても活躍中。著作に『決定版 儲かる米ドル預金』(マネジメント社)、『眠ったお金を揺り起こせ』(ブロンズ新社)、『投資に勝つ最強の「心理」法則』(オーエス出版)、『「金」と考える分散投資』(ブックハウスジャパン)などがある。

