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「中央銀行の金売却やETF保有金の減少などで足元は上値が重い」

マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表 亀井幸一郎氏

2007年6月15日更新

金市場では、最近、今年3月から3ヵ月の期間をもってスペインの中央銀行が108トンの保有金を売却した。ワシントン協定では5年間で計2500トンの売却枠を定めているが、このうちドイツ中銀が年間120トンで計600トンの枠を確保していた。ところが、この枠を行使しない方針を固める一方、今年度はスペインがこの枠を使おうとする動きが見られる。

ただし、中央銀行の売却の動きが最近ほとんど無かったことから、そのニュースが市況にとって心理的な圧迫材料になっているものの、あらかじめ協定で決められた枠を超えて金を売却することはない上、事前にマーケットには材料として織り込まれていることで、重要な変動要因とはならないものと見られる。

一方、9月の総会を控えてIMF(国際通貨基金)の保有金の売却が蒸し返される可能性があることは警戒を要する。仮に、売却案が出てきたと仮定しても、実際にはアメリカが反対すれば売却はできないためその実現性は低い。ただし、万が一売却が決定した際には保有している400トン程度の金が売却されることになるため、それによってマーケットは弱材料と受け止めることは避けられまい。

金ETF(上場投資信託)に関しては、再び増加していくことだろう。今年5月は一時的に残高が減少に転じたものの、これは欧米の富裕層を顧客とする一部ヘッジファンドが利食いに動いたためであり、年金基金などの筋は売っていない。利食い売りも一巡した観があり、金ETF残高はこれから増加傾向に戻っていく可能性が高い。

話しは変わるが、外部要因面を見ると、ドル安が進むことによって金市況が支援される点は見逃すことができない。米国経済は1−3月期の実質GDP成長率が前期比年率0.6%に下方修正されたものの、これからは上向いていきそうだ。それに伴い、FRBの金融政策は利下げ観測が払拭されよう。ただし、欧州ECBもさらなる利上げに動きやすくなることから、市場では当面は米国の利下げ観測以上にECBの追加利上げ観測が材料視されやすくなりそうだ。ユーロ高がさらに進めば金相場は上昇しやすくなる。

内部要因としては、現在はファンドの買い玉整理が進んでいるものの、その動きが一わたり完了した時点で買い直してくることが予想される。

ただ気になるのは、中国株が不安定な動きとなっているが、これが米国株にも波及すると円キャリー取引の巻き戻しが進むと考えられることだ。そうなると金相場は益出し及び換金売りから一時的に下落すると思われ、円建て相場は円高となることで下げ幅を拡大する可能性があることは否定しにくい。


亀井幸一郎氏
亀井 幸一郎(かめい こういちろう)

中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、87年マネー・マネジメント・インスティチュート(MMI)入社。92年ワールド ゴールド カウンシル(略称WGC/本部ロンドン)入社。企画調査部長として経済調査、マーケット分析に従事。98年同社退社、執筆、講演などの活動を開始。現在日経CNBCテレビにて日経CNBCエキスプレス「グローバル・ウォッチ」にレギュラー出演中。また住友金属鉱山サイトでのメールマガジン、日経マネーにて金市場「マーケット詳解」を連載中。