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「2007年後半の金を取り巻く環境と需給の総括的分析」

丸紅経済研究所 所長 柴田明夫氏

2007年5月18日更新

2007年後半の金市況をどのように見たらよいだろうか。金融商品とコモディティ(実物商品)との2つの性格をもつ金市況は、それだけに両市場からの、多くの騰落要因による複合的な影響を受けることになる。そうかと思うと、ヘッジファンドに代表される投機マネーは、単一の材料によっても一気に売り・買いを仕掛けてくることもある。そこで、今後の金市場を取り巻く環境と市況への影響をまとめてみよう。

金市況の行方を予測するうえでの出発点は、まず、チャート上での現在の位置を、日足、週足、月足の短・中・長期レンジから確認することであろう。それぞれのレンジで、現在の市況が上昇トレンドにあるのか、下降トレンドか、あるいは保ち合い相場なのかを判断する。上昇トレンドであれば、重要なのは、当面の市況が直前の高値(上値抵抗線)を抜くかどうかである(逆は逆)。この点、5月中旬現在のNY金市況(期近)はどう判断したらよいだろうか。

(1)短期的には、1オンス690ドル台からの反落であり、(2)中期的には上昇トレンドの押し目、(3)そして長期的には、2005年後半の400ドル近辺から06年5月の700ドル突破まで、300ドル強の上げ相場を演じた後の揉み合い調整局面といえる。調整幅は570ドル〜700ドルであるが、下値は670ドル前後まで切り上がっている。従って、今後のチャート上のポイントは、金の700ドル挑戦であるが、すでに07年2月、4月と2回、700ドル試しに失敗している。このため3度目のトライに失敗すれば、中期的な上昇トレンドが崩れることになるので要注意だ。

チャート上の位置が決まれば、将来の市況を決めるものは材料である。これについて筆者は、金市況は、原油など他のコモディティと同様に、三層構造から成るとみている。第1は、需給ファンダメンタルズ要因。すなわち、鉱山会社の生産・ヘッジ戦略、中央銀行の売却、実需(宝飾品、工業用)、投資需要(金塊、金ETF)、公的保有金の増加などである。特に、最近は、需要を押し上げる要因として金ETFの動向からは目が離せない。また、中国、ロシアが金準備を増やす方向にある。第2は、他の市場との相関関係である。

コモディティとしての金は、金融市場(ドル、株式、債券・金利)の動向とは、基本的に逆相関にある。インフレ圧力が強まれば、ドル、債券、株式が売られる一方、インフレヘッジ商品として金の魅力が増す(逆は逆)。また、原油や白金、非鉄などとは順相関関係にある。特に、白金ETFがスタートしたのに伴い、金との相関が一段と強まる公算が大きい。さらに、最近は、原油価格→ガソリン→エタノールの文脈で、トウモロコシはじめ穀物市況との連動も強まっている。

第3に、金は、地政学的リスクに対して「資産の逃避先」となる。イランの核開発問題、イラク治安悪化、ナイジェリア武装勢力、ロシアやベネズエラにおける資源ナショナリズム、中国の旺盛な資源外交などを考慮すると、「有事の金」は復活しつつある。


柴田明夫氏
柴田明夫(しばた・あきお)

丸紅経済研究所所長。1976年東京大学農学部卒業後、丸紅株式会社に入社。鉄鋼第一本部、調査部を経て、2000年に業務部(丸紅経済研究所)産業調査チーム長。02年に同研究所主席研究員。03年から同副所長。06年から現職。経済企画庁「環境・エネルギー・食料問題研究会」委員、農林水産省「食料・農業・農村政策審議会」臨時委員などを歴任。近著に「資源インフレ−日本を襲う経済リスクの正体」日本経済新聞社。