「TOCOMナビ」ページ内リンク

  1. 「メインメニュー」へ移動する
  2. 「本文」へ移動する
  3. 「上場商品ガイド」へ移動する
  4. 「サイトの利用説明」へ移動する


最新トピックス

最新レポート

「潜在的な市況押し上げ要因が底流し続ける情勢が続く」

東京国際大学 国際関係学部 教授(富士通総研 経済研究所 客員研究員)
武石礼司氏

2007年5月4日更新

原油相場は最近数年間にわたり高騰を続け、昨年7月14日に78.40ドルの高値をつけ、年明け1月18日には50ドル割れまで半年間で30ドル近く下げたものの、その後再び堅調な足取りとなっている。その要因は需給面で、とくに需要が伸びていることにある。

圧倒的な原油消費大国である米国では、00年にITバブルが崩壊したことで翌01年にはリセッションに陥ったが、その後は景気拡大を続けている。足元ではサブプライムローンの焦げ付きリスクがささやかれているなど、住宅投資が落ち込んでいることから景気が減速しているが、それでも長期金利が低水準での推移を続けていることから景気失速は回避され、住宅セクターの調整が終われば再浮揚していくと見る向きが多いようだ。それに加え、近年、高度成長を続けてきたことで急激に原油の需要が増大している中国でも、様々な気になる要因を抱えているとはいえ、少なくとも08年の北京五輪の開催まではこれまでの高成長が続くと見る向きが支配的である。それ以外にも、欧州でもドイツを中心にかなり実体経済が好調な状態にあり、またいざなぎ景気を上回る長期景気拡大を続けている日本でも、足元では再び踊り場にさしかかる兆しが出ているものの、それでも米国や中国での景気が腰折れしなければ、輸出の伸びに支えられて景気は底堅い状況を続けそうだ。こうして見ると、原油の需要は今後も着実に拡大を続ける公算が高い。

他方、供給面ではロシアやブラジルといった非OPECの産油国で生産量が伸びると予想されている。とはいえ、OPECとしてはこれらの国々と同様に産油量を着実に伸ばしており、足元では日量150万バレルもの産油量を誇るアンゴラを新規加盟させた意義が大きいだろう。それにより、サウジアラビアを中心に市況の動きに対して機動的に対処して生産調整に動きやすくなっている。だとすれば、原油市場はこれからも需要が着実に伸びていくものの、それにより市況が上昇すればそれに対応して生産量も増えていくことで、規模が大きくなっていくことになりそうだ。

ただし、需要が伸びることは容易に推測がつくことであるため、それ自体は織り込まれてしまい、市況の動きを左右することにはならないと思われる。注目されるのは、足元ではガソリンの品薄感から市況が上昇しているが、そのガソリンの需要を左右する夏場の北米での気候がどうなるかにある。これからドライビング・シーズンの最盛期にさしかかるにつれて、猛暑になればそれだけ需要が増えることになる。また、夏から秋にかけては年間で最もメキシコ湾岸にハリケーンが到来する時期に当たるが、猛暑になれば多くのハリケーンが発生することで、それだけ湾岸に上陸して石油精製施設やパイプラインが損傷するリスクが高まることになるだろう。

また、もうひとつ注目されるのが地政学的リスクだが、ナイジェリアやベネズエラといった政情不安や反米政権による国有化の動きも気になるとはいえ、やはり最も大きな影響を及ぼすのがイランをめぐる問題だ。同国については、従来からの核開発問題に加えてイラクへのシーア派への支援問題も加わり、米国との悪化した関係が改善に向かう気配が見られない。その時々において緊張が高まったり和らいだりといったことを繰り返しながらも問題が抜本的に解決に向かう可能性は小さく、いずれは米国が同国の核施設を空爆するといった見方も依然として消えない。そうなればペルシャ湾の原油供給が滞ることで一時的に需給がかなりひっ迫するのが避けられず、またそうしたことが起こるまでは、この問題が潜在的な市況押し上げ要因としてくすぶり続けることになりそうだ。


武石礼司氏
武石 礼司(たけいし れいじ)

1975年3月 東北大学法学部卒業。1975年4月 アラビア石油(株)入社。1991年4月 (財)日本エネルギー経済研究所 主任研究員。1994年3月 法政大学大学院経済学研究科修士課程修了。1994年4月 (財)石油開発情報センター 研究部 主任研究員。1997年12月 (株)富士通総研入社(経済研究所 主任研究員 環境・エネルギー担当)現在に至る。2003年3月 早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程単位取得。著書に、「国際開発論」(幸書房 2006年9月)、「アジアの産業発展と環境」(石油文化社 2006年8月)、「森林バイオマス」(川辺書林 2003年2月)、「環境保全と企業経営」(東洋経済新報社 2002年10月)などがある。