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「中国やインドの需要が伸びる一方供給も増えて需給バランスは均衡」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主任研究員 芥田知至氏
2007年4月20日更新
アルミニウムをはじめ非鉄市況を見るうえで、2月27日の世界同時株価急落の現象は気になるところだ。非鉄は産業用素材であり景気に非常に敏感な銘柄であるだけに、株価急落から景気が落ち込めば大きなダメージを受けざるを得ないからだ。ただ、今回の株安の発端である中国株の急落は、当局が投資過熱抑制策を打ち出したのがきっかけとなって起こったものであり、中国経済は近年高成長を続けているとはいえ資本市場構造はまだ発展途上であり、株価の変動が経済情勢に及ぼす影響は限定的であると思われる。
以上のことを踏まえてアルミニウムの需給関係を概観すると、需要面では他の非鉄金属と比べると安定している。銅や亜鉛、ニッケルは在庫水準が慢性的に低いが、アルミニウムはそうした状態にはないからだ。昨年後半以降、市況が緩やかに上昇してきたのはエネルギー価格の高騰によるコスト高や、銅相場が昨年5月にかけて急騰を演じたことでその出遅れ感から買われていること、さらには代替需要が出ていることによるところが大きい。
アルミニウムは輸送機械向け、インフラ関連での建設資材向け、食料品工業向けなど所得水準が上がるほど需要が高まるものであり、経済成長が続けば間違いなく需要が増えていく。とくに中国はインフラが未整備で輸送機械の普及もこれからであるだけに、今後も需要が伸びるテンポは速いだろう。08年の北京五輪や10年の上海万博を控えて高成長がこれまで通り続くことが予測されることで、需要は増加傾向を続ける可能性が高い。
インドでも高成長が続き、インフラ関連の需要が伸びている。また中東でも需要増加傾向が顕著に見られ、中でもサウジアラビアでは国内の人口増加による雇用創出や都市と地方との格差是正を目的に経済都市開発構想を推進しているだけに、需要が飛躍的に伸びる見通しである。
これに対し、供給面では、需要が増加している中国での能力増強に加え、最近は産油国である中東や水力発電を利用できるアイスランドをはじめ、エネルギー資源の豊富な国での能力が増強しつつある。一方、人件費の高い先進国ではエネルギー価格の高騰もあってコスト増加から精錬事業の撤退が進んでおり、ここにきて欧米でもそのような傾向が進んでいる。
中国ではアルミ製錬事業が基幹産業の一つと位置づけられているが、主要都市で停電が相次いでいるようにエネルギー制約があるのが実情であり、政府が乱立した精錬会社の集約に動いている。このため、生産能力が野放図に拡大するわけではなく、需要増に対応した増産が目指されるであろう。世界的に見ても、速いテンポでの需要増加が続いており、需給バランスが大きく崩れることは考えにくい。
また、ロシアの国営企業が大型買収を通じて巨大企業化することも含めて、世界的に寡占化が進んでいる。米国やカナダの従来からの大企業に加え、ロシアや中国や中東の新たな大プレーヤーによる市場支配力が高まりつつある。彼らの経営戦略によっては、中長期的に市況底上げ要因になっていく可能性があるかもしれない。
芥田 知至(あくた ともみち)
早稲田大学政治経済学部経済学科卒。青山学院大学国際政治経済学研究科修了。山一證券入社後、山一証券経済研究所経済調査部、NY事務所を経て98年に三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)入社。調査部にて米国経済、ラテンアメリカ経済、日本経済を担当した後、現在は国内経済・商品市況などを担当。各種メディアに寄稿・コメント提供多数。著書に『知られていない原油価格高騰の謎 』(技術評論社)などがある。


