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「地政学的リスクの他に社会開発プレミアムが原油市況に潜在化する」
国際開発センター エネルギー・環境室 主任研究員 須藤繁氏
2007年4月6日更新
今後、原油の需給関係は緩和していくと考えられる。米国をはじめ、OECD諸国の石油在庫が高水準にあるなか、一昨年からの能力拡張の動きが顕在化してくると見られ、OPECの余剰生産能力が今年半ばには日量400万バレルを超えて450万バレルに達する可能性があるためだ。これにロシアやアンゴラ、ブラジルといった非OPEC諸国でも産油量が伸びると見込まれる。
しかし、これらの要因は短期的な悲観材料ではあるものの、中長期的な市況を見通す上では、別な部分での支援材料が底流していることから、需給緩和の弱材料が打ち消されることが考えられる。具体的に、その支援材料とは、地政学的リスクと社会開発プレミアムの二つである。
地政学的リスクは、その性格から二通りに大別できる。一つは、巷間で広く認識されている資源ナショナリズムの高揚や政情不安、紛争等に伴うものである。例えば、ロシアでは新規権益への外資参入を抑制したり、国営企業に株式を譲渡させられて権益の縮小を余儀なくされるケースが相次いでいる。また、昨年はウクライナにガスを、今年初にもベラルーシに原油の輸出を停止するなど資源エネルギーを外交の“武器”に利用されている。
もう一点の地政学的リスクは、中南米最大の産油国であるベネズエラで反米感情が高まっている点などが挙げられる。産油国が集中している中東で政情不安や紛争が絶えないのは指摘するまでもないが、とくにイランについては核開発問題やイラク国内のシーア派への援助等から、いずれ米国が空爆を実施するとの見方には根強いものがある。仮に、イランからの原油供給がストップしてしまえば、日量390万バレルもの供給が消失してしまうことから、需給関係には大きな影響をもたらすことだろう。
まったく別な角度では、社会開発プレミアムによる原油高の部分が指摘できる。最大の産油国であり圧倒的な輸出国であるサウジアラビアでは新卒者が年間20万人ものペースで増えているため、雇用を創出していかなくてはならない。サウジアラビアのアブドラ国王は「経済都市構想」を打ち出し、これまでだけでも地方の5都市を指定し、外資を誘致して大規模なプロジェクトを打ち出している。そこでは今後20〜30年間で数10億ドルもの資金を要することから、こうしたコストが原油相場にビルト・インされていくことになるだろう。
原油市況は、冒頭で指摘したとおり、需給ファンダメンタルズの緩和が懸念要因として底流しているが、地政学的リスクと社会開発プレミアムが上乗せされることで、それが相殺要因になってくるものと考えられる。また前述のとおり、イラン関連の不透明要因を抱えていることから、一連の情勢いかんでは市況環境が急変する可能性があることを忘れてはなるまい。
須藤 繁(すどう しげる)
(財)国際開発センター エネルギー環境室長 主任研究員。昭和48年中央大学法学部卒業。昭和48年石油連盟入局。昭和57年7月〜60年9月 外務省採用(在サウジアラビア日本国大使館二等書記官)。昭和60年9月 石油連盟に復帰(外国調査部)。平成3年11月ジェトロ・ロンドンセンターに出向(石油資源部長)。平成8年9月石油連盟調査部次長。平成11年4月(株)三菱総合研究所入社(科学技術研究本部資源・エネルギー科学研究部 専門研究員)。平成14年7月(財)国際開発センター入所 現在に至る。主な著書に、「石油市場の現状と将来−偏在と互恵」(1995年6月「世界の動き社」刊)、「日本の産業システムーエネルギー」(2004年1月NTT出版刊)(共著)などがある。


