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「ガソリンや灯油の価格はどのようにして決まるのか」(下)
垣見油化(株) 代表取締役専務 垣見裕司氏
2007年3月9日更新
石油製品は、原油を沸点の差を利用した「蒸留」という方法で「精製」されている。常温で気体ならLPG。例えば180度まで加熱して気体になるものはガソリンやナフサ、250度までで気体になれば灯油、350度なら軽油、そして最後まで気体にならないのが重油や残渣(ざんさ)油である。ちなみに「得率」という言葉は、ある特定の原油から普通に精製(常圧蒸留)して採れる各石油製品の割合を言う。軽質原油の代表であるサウジアラビアのアラビアンライトなら揮発油25%、灯軽油27%、残渣油48%。一方、中国の大慶原油は揮発油10%、灯軽油12%、残渣油は何と74%にもなる。その意味では世界のニーズは軽質油であり、その範囲なら、軽質のWTIが中質油のドバイやオマーンより高いのはもっともである。
さて国内の石油製品の価値も、ガソリンやナフサが一番高く、ジェット燃料、灯油、軽油そしてA重油の順となり、C重油は原油より安いのが実状である。この需要構造の変化に対応するため、精製メーカーは減圧蒸留、残渣油分解、水素化脱硫等の設備投資を順次進めてきたものの、そのコストや処理速度のほか能力等の見合いもあり、ミスマッチの全面解消には至っていない。
昨今、深刻なのは実需要の落ち込みだ。長年、前年実績を超えていたガソリン消費量も今年度は97-98%にとどまりそうだ。価格高騰から液化天然ガス(LNG)に燃料転換されつつあるA重油や原子力発電の正常化でC重油も90%以下である。ほぼ固定費の精製装置産業にとって実はこの数量減は極めて深刻で、落ち始めた設備稼働率を上げたい心理が供給過剰を招いている。
もう一つの特徴である「季節商品」も厄介だ。ガソリン需要が最も低い2月は450万KL、多い8月は580万KL。ガソリンの28%の増加値までは何とか許容範囲としても、灯油需要は8月の100万KLに対し、冬場は5倍の500万KLに達する。それだけ季節によって大きく需要が違ってくるだけでなく、ガソリンと灯油の需要時期が正反対になるのも我々当業者にとっては辛い点である。
従って、灯油はシーズンが終わり、精製設備の定期修理が終わった6月以降、約半年後の需要期に向けて在庫しなくてはならない。普通の一般経済では、安い時期に買っておいて高い時期のために在庫を抱える。しかし需要減で設備過剰状態となった石油業界にとって、在庫を積むということは、そのまま価格下落を意味すると言っても過言ではない。
国内製品の価格予想に際し、最後の決め手となるのは「在庫」の「絶対量」や「昨年対比水準」であろう。作り過ぎたから倉庫を借りればよいという普通の工業製品ではないので、入れるタンクがなければ業転市場に緊急放出するしかない。しかし他社も同様であれば、業転価格の下落は止まらない。足元のガソリンがその状態なのかもしれない。サルファーフリー(※)にしたガソリンや軽油の性状は世界一となり、事実上海外品が輸入できないはずなのに、今の業転価格は元売の立場でなくても、摩訶不思議な価格が形成されているとも言えるのである。
垣見裕司(かきみ ゆうじ)
垣見油化株式会社代表取締役専務。(石油業界の中堅特約店経営者という立場ながら、)資源エネルギー庁の石油流通課研究会委員(H13-14年)や同石油販売業経営高度化調査・実現化事業委員長(H14-18年度)等を務める。また垣見油化のホームページ(http://www.kakimi.co.jp)で同氏が業界問題を解説する毎月のトピックスは大人気。年間アクセス数も50万件を誇り業界内外から高く評価されている。業界月刊誌(ガソリンスタンド)での連載などの執筆活動の他、石油事情や人材育成等の講演も数多く行っている。
- (※)サルファーフリー
サルファとは硫黄を指す。燃料等に硫黄が多く混入されていると、排ガスの中に硫黄酸化物(SOx)が排出されたり、窒素酸化物(NOx)が増加したり、不完全燃焼等で燃え残った「すす」等が、粒子状物質(SPM)となったりして、人体や環境に影響を及ぼす。この硫黄分を減らすのが「低硫黄化」。サルファーフリーとは硫黄分が10PPM (PPMは100万分の1)のまで低減された状態のこと。


