「TOCOMナビ」ページ内リンク

  1. 「メインメニュー」へ移動する
  2. 「本文」へ移動する
  3. 「上場商品ガイド」へ移動する
  4. 「サイトの利用説明」へ移動する


最新トピックス

最新レポート

「環境問題をエネルギー産業の観点から考察する」

UBS証券会社シニアアナリスト 伊藤敏憲氏

2007年3月2日更新

1997年12月に京都で開催された第3回締約国会議(COP3)で採択された温室効果ガスの削減を先進各国に義務付けたいわゆる「京都議定書」(※)の評価期間が迫ってきた。同議定書による我が国の温室効果ガス削減目標は2008〜2012年に一人当たり排出量を1990年対比で6%削減するというものだ。ところが、一人当たり排出量は1990年から2005年にかけて8%余り増加し、依然、増加傾向に歯止めをかけることができていない。

例えば、石油製品は多くの用途分野で消費量が増加している。石油製品の用途別消費量の推移を見ると、発電用以外では特に製造業向け、家庭用、民生用、旅客輸送用の伸びが顕著だ。1990年度の消費量を100とした場合の2003年度の消費量は製造業向けが137、家庭用が120、業務用が119、旅客運輸用は140に達している。

温室効果ガスの排出量を削減するために利便性を損ねるような節約や需要のシフトを促すことは極めて難しいので、省エネルギーをより一層推進したり、温室効果ガス排出量の少ないエネルギーの導入支援策を導入したりすることによって、エネルギー利用効率を向上するとともに、エネルギー間での需要シフトを促すような対策が取られることになると予想される。

対応策の一つとして、乗用車用エンジンのディーゼル化の推進が検討されている。ディーゼルエンジンの燃費はガソリンエンジンより2〜3割良いので自動車用燃料全体の需要が抑制できるからだ。また、温室効果ガスに算入されないバイオ燃料の導入を推進しようとする動きもある。バイオエタノールあるいはこれを加工したエーテル化合物(ETBE)をガソリンに配合したり、植物性の油脂や廃油などを加工して製造した燃料を軽油の代替品として使用しようといった動きだ。ただ、これらの対策の効果は限定的で時間もかかる。わずか数年の期間で大きな成果を上げることはできないだろう。

このため、環境関連税制の導入が検討されている。環境省傘下の地球環境審議会が2003年8月に作成した報告書には、化石燃料に含まれる炭素1トン当り3400円の税を課して、その税収約9500億円を温暖化対策に投じれば、温室効果ガスの排出量を1億4000万トン削減でき、京都議定書の目標を達成できるとの試算結果が示されている。ただ、この試算には各方面の専門家から大きな疑問が呈されている。環境省や環境関連団体が公表してきた環境政策の試算結果には、コストを過小に見積もり効果を過大に評価する一方、経済へのダメージをほとんど見込まないなど、信憑性に乏しいものが多い。

これまでは省庁間での調整が不十分で無視しても良かったが、目標達成の目途が立たない中では無視できなくなりつつある。環境税が導入されると、経済全体や個々の産業に深刻な悪影響を与える可能性がある。エネルギー産業が環境税によるコスト上昇分を末端価格に容易に転嫁できるとは思えない。環境規制の強化をきっかけに、規制の緩い中国などへ事業所を移転する動きが広がる可能性があるが、これは、日本経済にダメージを与えるだけではなく、地球全体で見ると環境負荷を重くすることにほかならない。

「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネ法)」(※)によって、燃料電池、天然ガスコージェネレーション、クリーンエネルギー自動車など、従来型エネルギーの新しい利用形態の導入が推進されているが、効率の高いコージェネレーション以外は、コストあるいは技術的なネックを抱えている上に、燃料の開発・改質段階から通算すると必ずしも地球環境に優しいわけではない。

マスメディアは「環境」を神聖化した報道を行う傾向がある。偏った政策議論が既成事実化されることがないように、エネルギー業界関係者は速やかに実情を国民に分かり易く真摯に訴えていくことが必要だろう。


伊藤敏憲氏
伊藤敏憲(いとう としのり)

UBS Warburg証券会社株式調査部シニアアナリスト・ディレクター。1984年に東京理科大学理工学部工業化学科卒業。同年大和證券株式会社入社。同年6月に椛蝌a証券経済研究所(大和総研)に出向。1999年4月 HSBC証券東京支店にシニアアナリストとして入社。2000年4月 UBS Warburg証券会社に入社し現職。産業並びに企業の調査研究業務に従事し、これまで石油、電力、ガス、鉄鋼、商業、サービスなどの産業の調査を担当。現在は、石油・鉱業業界の調査と企業業績全般のとりまとめを担当している。また日本証券アナリスト協会の検定会員で、ディスクロージャー研究会などの委員に就任中。通商産業省 石油審議会 備蓄問題検討作業部会、アジア石油問題研究会などの委員も歴任。著書に、「厳しさ増すエネルギー事情と関連産業」(大和総研)など。


(※)「京都議定書(Kyoto Protocol)」

気候変動枠組条約に基づき、1997年12月11日に京都市の国立京都国際会館で開かれた地球温暖化防止京都会議(第3回気候変動枠組条約締約国会議、COP3)で議決した議定書である。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの一種である二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、HFCs、PFCs、六フッ化硫黄について、先進国における削減率を1990年基準として各国別に定め、共同で約束期間内に目標を達成する。運用細目は、2001年に開かれた第7回気候変動枠組条約締約国会議(COP7、マラケシュ会議)において定められた。日本では、2002年5月31日に国会で承認され、2004年6月4日に受諾書を寄託した。

(※)「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネ法)」

資源制約が少なく、環境特性に優れた性質を持つ石油代替エネルギーの導入に係る長期的な目標達成に向けた進展を図ることを目的に1997年に制定された。「新エネルギー利用等」とは、1980年の石油代替エネルギー法第2条に規定する石油代替エネルギーを製造・発生または利用し、また電気変換で得られる動力を利用することのうち、経済性の面における制約から普及が十分でないものであって、その促進を図ることが導入を図るため特に必要なものとして政令で定めるものとされている。エネルギー源の性質により、供給サイドでは(T)自然エネルギー(再生可能エネルギー)と(U)リサイクル・エネルギーに、需要サイドでは(V)従来型エネルギーの新しい利用形態 の3種類に分類される。具体的には、(1)太陽光発電、(2)風力発電、(3)太陽熱利用、(4)温度差エネルギー、(5)廃棄物発電、(6)廃棄物熱利用、(7)廃棄物燃料製造、(8)バイオマス発電、(9)バイオマス熱利用、(10)バイオマス燃料製造、(11)雪氷熱利用、(12)クリーンエネルギー自動車、(13)天然ガスコージェネレーション、(14)燃料電池、が該当する。