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「米国の石油需要や地政学的リスクなどの波乱要因が潜在化」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主任研究員 芥田知至氏
2007年2月23日更新
新年が明けてからの原油相場は軟調な地合いとなっている。その原因の一つに、米国経済が住宅投資の減少を主因として減速しているなど世界的に景気が鈍化、それに伴い石油需要が伸び悩んでいる点がある。最近では米北東部が暖冬となっていることにより、暖房油の需要が低迷していることはよく取り上げられている。供給面では、OPECが12月から日量120万バレルを減産し、さらに2月から同50万バレルを追加減産することを決めているが、現時点で実際には同60万バレル程度にとどまり、決定の約半分しか遵守されていない状態であることも見逃すことはできない。
需要面のマイナス材料は、まだなお現在進行形で下落要因となっているものの、いつまでも続くものではない。暖房油が暖冬による需要の低迷だけでなく在庫自体も高水準だったのに対し、ガソリンについては3月になると積み増し期に入る上、環境規制から州ごとに規格が異なり在庫水準が低いところがあるため、全体的にガソリンの引き合いが強くなってくることが考えられる。この結果、ガソリン主導で原油相場が押し上げられる可能性がある。
供給面では、OPECの協調姿勢が緩んでいるのが気になるとはいえ、原油価格が今後一段と下落するようであれば追加減産を決めるだけでなく、減産に同調する加盟国が出てくることも考えられる。別な角度では、これまで減速気味となっていた米国経済が、長期金利の低下によって下支えられ、年後半には再浮上する局面に移行していくことが考えられる。この結果、石油需要が旺盛になり、この先の石油製品の需給関係は少しずつ緩和状態が修正されて行くものと見られる。
一方、地政学的リスクについては、イラクからの駐留米軍の撤退を巡っては、まだまだ紆余曲折が予想される。実際、ブッシュ米大統領は1月10日にイラク新政策を発表、首都バグダッドの治安改善を主目的に約2万人の米軍兵力を増派する方針を表明した。この米軍の動きが事態の鎮静化につながればよいが、逆に波乱要素になる可能性もあり、注意深く情勢の変化とそれによる影響を推し量る必要がある。
また、イランの核開発問題については、米国、イランとも政治的な推進力を失っており、しばらくこう着状態が続きそうだ。ただ、両者の駆け引きの中で、どちらかといえば事態は悪化しやすくなると見た方が良さそうであり、原油市況にとっては下支え要因になりそうだ。いずれにしても、中東情勢に関しては、紛争の火種がくすぶっていることは事実であり、それが原油市況にとっての波乱要因となって潜在化している。
芥田知至(あくた ともみち)
早稲田大学政治経済学部経済学科卒。青山学院大学国際政治経済学研究科修了。山一證券入社後、山一証券経済研究所経済調査部、NY事務所を経て98年に三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)入社。調査部にて米国経済、ラテンアメリカ経済、日本経済を担当した後、現在は国内経済・商品市況などを担当。各種メディアに寄稿・コメント提供多数。著書に『知られていない原油価格高騰の謎 』(技術評論社)などがある。

