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「2007年の工業品系・素材市況の動向を見る上でのポイント」

丸紅経済研究所 所長 柴田明夫氏

2007年1月12日更新

資源インフレ

柴田明夫著「資源インフレ−日本を襲う経済リスクの正体」 日本経済新聞社出版局

2006年の原油、ガソリン、金、白金、銅、アルミニウムなどの市況は、年前半と後半で強弱対照的となったものの、総じてここ2〜3年の上昇トレンドを維持した。果たして07年はどうか。工業品系・素材市況を占う上でのポイントを拾ってみた。

一般に、国際商品市況の騰落要因としては、(1)需給ファンダメンタルズ、(2)テクニカル・チャート、(3)他資産との相対価格などがある。(1)では、世界景気の動向に加え、どの国・地域、あるいはどの分野の需要が好調なのか、それは実需か投機的需要かをみる必要がある。供給面では国・地域別にみた生産・在庫の増減、設備投資や生産コストの動向をみる。最近では、中東情勢を中心とする地政学的リスクや資源ナショナリズムの広がりも供給不安につながるため重要だ。(2)は、現在の市況が上昇トレンドにあるのか、下降トレンドか、あるいは保ち合い相場なのかを判断。トレンドが確認できるならば、誰が買っているのか、売り手は誰かを考える。(3)では、商品市況の場合、総じて金融資産(ドル、株価、債券)価格とは逆相関、その他商品とは順相関の関係にあることを頭に入れておくことが必要だ。もちろんこれらの要因は同じウェイトで市況に影響を及ぼすのではない。実際には、市場参加者の熱い思いの中で、これらの要因が組み合わされ、やがて1つの主旋律となって市況が形成されることになる。

では、07年の商品市場における主旋律を形成するとみられる要因はなにか。第1に、世界景気の動向だ。世界経済は、04年以降5%前後の成長を続けている。07年は、先進国の利上げの影響からやや鈍化するものの、4%台後半の成長は維持されるとみられる。牽引役はBRICs(ブラジル、ロシア、インド、チャイナ)などの新興市場国だ。特に、中国は引き続き投資主導による10%前後の成長を予想。30億人弱の人口を抱えたBRICsの成長は「工業化」であり、エネルギー・資源多消費型の成長で、成長すれば工業品系・素材需要の拡大に直結することから需給面での相場押し上げ要因だ。

ピーク・オイル

リンダ・マクウェイグ著「ピーク・オイル− 石油争乱と 21 世紀経済の行方」 益岡賢訳

また、ここ数年の原油価格の高騰による世界のパワーバランスの変化にも留意が必要だ。産油国が巨額のオイルマネーを手にしたことで、これらの国に資源ナショナリズムが高まり、イラン、ベネズエラ、ボリビアなどの反米・左派政権による資源の囲い込みの動きが強まっている。このことは、現在の価格と技術レベルで開発可能な資源が囲い込まれ、将来必要な供給が制限されることを意味する。また、原油価格の高騰は、消費国に「ピーク・オイル問題」という資源の枯渇問題を突きつけた。ピーク・オイルとは、在来型石油の枯渇により供給能力が拡大する需要に追いつかなくなる現象を言い、生産がピーク(頭打ち)になると、それ以降の原油生産の減退を止められない状況となる。その結果、限られた石油資源をめぐって国際間の争奪戦が激しくなり、国際情勢が不安定になるのが特徴だ。資源の枯渇を先送りするためには、省エネ・省資源は勿論、条件の悪い地域での生産や代替資源の開発が急務だが、そのためには限界コストをカバーできる価格が市場で形成される必要がある。


柴田明夫氏
柴田明夫氏(しばた・あきお)

丸紅経済研究所所長。1976年東京大学農学部卒業後、丸紅株式会社に入社。鉄鋼第一本部、調査部を経て、2000年に業務部(丸紅経済研究所)産業調査チーム長。02年に同研究所主席研究員。03年から同副所長。06年から現職。経済企画庁「環境・エネルギー・食料問題研究会」委員、農林水産省「食料・農業・農村政策審議会」臨時委員などを歴任。近著に「資源インフレ−日本を襲う経済リスクの正体」日本経済新聞社。