第5回(2007年2月2日更新)
『価格を動かすもの4』
【大衆人気3】
事件や需給データがすぐに、正確に、市場に反映されるかというと、そのように市場が素直に反応するとは限りません。時には、理屈としては値上がりして当然なのに、どうしてこの場面で値下がりするの?…という状況もしばしば起きます。
一つの例で見てゆきましょう。2006年7月5日早朝に、北朝鮮のミサイルが日本海に向けて7発発射されました。当日の朝一番で、東京工業品取引所の金価格(グラム当り円建て)は、前日終値比で一時37円高くなりました。しかし、価格の上昇は続かず、その日の高値から22円安くなって取引を終えたのです。日本に最も近いところにミサイルが飛んで来たことから、瞬間的に「有事の金買い」の動きが高まりましたが、その直後に金価格は下落に転じたわけです。参考までに、同じ日の東京工業品取引所の原油価格(キロリットル当り円建て)も同様に80円安と下げてしまったのです。
ところが、独立記念日で7月4日は休みだったニューヨーク市場が5日に開くと、金価格は7ヶ月ぶりの高値、原油価格は史上最高値に高騰しました。それを見て、翌6日の東京市場では、原油は朝から1200円のストップ高となりました。一方、東京金価格は相変わらず反応しませんでしたが、インドで列車爆破があり、更に、イスラエルがレバノンを空爆するとの情報が伝えられると、ようやく重い腰を上げて上昇しました。
このような東京市場の動きは、理解に苦しむものです。地政学的リスクに反応せず、理屈どおりに市場が動かなかったひとつの例です。しかし、この動きを逆手に取ることで、勝機が生まれます。今回のミサイルの例でも、結局日本海に飛んできたミサイルは米国で地政学的リスクと認識され、一日遅れで市場に反映されました。東京市場の反応が一瞬遅れた時点で、投資的な好機が生まれたといえるでしょう。大衆の人気が時にして間違った方向に導かれた、とも言い換えられます。
今回のケースでは、結果的に、ミサイルが飛んで来たとの情報を入手した時点で東京金や東京原油を買っていれば良かったのです。
一つの具体例として、仮に、東京金市場で金を1枚、7月5日の始値2365円(グラム当り円建て 6月限)で買い建てしたとします。その後の金価格の値上がりにより、7月14日には、2491円(同)となり先の買い建ての価格より126円値上がりし、ここで手仕舞い(=反対売買)すると、その分が利益となります。金は倍率が1000倍なので、値上がり益は12万6000円となり、そこから委託手数料等を差し引いた分が純粋な利益となります。
今回のケースの値上がり理由のすべてが北朝鮮のミサイルだけではなかったかもしれませんが、一つの大きな地政学的リスクであったことは間違いありません。
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