口髭がトレードマーク。齋藤精一郎さんは、テレビ東京系のWBS(ワールド・ビジネス・サテライト)のレギュラーコメンテーター、千葉商科大学大学院の会計ファイナンス研究科の教授、NTTデータ経営研究所取締役の所長をそれぞれ務め、エコノミストとして、社会経済学者として毎日多忙に飛び回っている。
はたして、デフレ脱却は本物なのか、今、まさに押し寄せてきているグローバリゼーション3.0の大きな波。デフレが終焉したあとの時代をどのように乗り越えていけばよいかを、若い世代との接点を持つ齋藤教授ならではの柔らかな視点を交えながら、お話しいただいた。
Profile:齋藤 精一郎(さいとう せいいちろう)
1940年東京生まれ。1963年3月東京大学経済学部卒後、同年4月から1971年8月まで日本銀行に勤務。1972年4月から2005年3月までの立教大学社会学部助教授・教授を経て、2005年4月から千葉商科大学大学院教授を務める。1991年4月からNTTデータ経営研究所取締役所長を兼任。テレビ東京系のWBS(ワールド・ビジネス・サテライト)などのコメンテーターを務める。主著書は近著の「大転換:日本経済2007年〜2015年」(PHP研究所)のほか「新成長経済の構想」、「10年デフレ」、「ゼミナール現代金融入門」(以上日本経済新聞社)など。訳書にガルブレイス著「不確実性の時代」(講談社文庫)などがある。
世界連鎖株安の真の震源地はNYか?〜グローバルマネーの動静:<第3回>
今年2007年2月の27日、突然、上海の株価が大きく下落しました。それに端を発した世界連鎖株安の要因は、新興経済、BRICs株の暴落が震源地という説が一般的ですが、よく見ると、震源地はアメリカなのです。NYのヘッジファンドが世界の株市場を動かしているのです。アメリカは、日本の円が安いからと、特に日本のお金をたくさん借りて、ドル買いやポンド買い、さらに、ユーロ買いを行って世界中にお金を投資している。アメリカのファンドは5、6割をアメリカに、2割くらいを新興国に投資しています。絶好調を10年以上も続けてきたアメリカ経済が、ちょっと減速して調整局面になると、上がり過ぎた中国を絞めておこうとか、たくさん借り入れた円を返しておこうと考えます。それで、上海の株価が大きく下がったり、円キャリー返済のための円買いで円が高くなって、日本の株価が落ちるわけです。アメリカの景気の動きを睨みながら、金融政策の状況とか不確定要素を織り込んで、ヘッジファンドが動くと、アメリカ経済が黄金の10年の調整に入ってきます。そうなると、アメリカが震源地となって世界的に株価の調整が起こるわけです。それから、アメリカの株は「上がり過ぎた株」といえます。かなり、株価はバブルっぽくなってきていますので、今年後半から来年に調整が起こる可能性を考えておく必要があるでしょう。
今後の株価ですが、第3波、第4波ぐらいまではあると思っています。株価がどかっと落ちると、景気もどかっと落ちるのではないかと多くの人が間違えるのですが、「株価の調整」と「経済の調整」とは基本的に違うことをしっかり認識してほしいと思います。落ち方は同じではありません。たとえば、アメリカの株価が落ちても、経済が急に1%台に落ち込むことはなくて、せいぜい2%前後に落ちる程度でしょう。中国の10%、インドの9%も、7%とか6%になるくらいで、一休みという感じです。グローバリゼーション3.0の波で、2000年以降、BRICsが好調ですが、一本調子で物事は続きませんから、調整は入るでしょう。けれど、経済がそれによって大きく崩れはしないですから、株価の下落に過剰反応して、大騒ぎするより、今、世界経済に起こっている大きな新しい波を掴んでおくことが大切です。
日本は、バブルを清算して、やっと不良債権問題を解決し、上昇に向かう局面にあります。これからバブルの調整に向かう欧米やBRICsとは明らかに違います。米国も、中国も、インドもダメだと、日本もダメになってしまうのではないかと、連動心理が働きますが、上と下、方向が違っていることをみんなが忘れているように思います。日本は、デフレが終わって、いよいよこれから新しい方向に向かう局面で、日経平均株価も基本的には18,000円、19,000円を狙う勢いがあることをきちっと押さえておく必要があるでしょう。一般の投資家も、多少、株価調整のとばっちりは受けますが、この方向性を押さえておけば、タイミングを見誤ることは避けられると思います。
齋藤研究室にてインタビュー
編集:鈴木 佐知子
取材後記
日本経済は、上昇局面にある反面、中長期的かつ構造上には「少子高齢化」という問題を抱えています。齋藤教授は、その実態を具体的な数字を上げてわかりやすく教えてくれました。厚生労働省が発表した人口の標準推計によると、2005年現在は20%の高齢化比率が、50年後の2055年には、40%になるそうです。あの夕張市は今、すでに40%と聞いて愕然となりました。「少子高齢化」は他人事ではなく、身近に差し迫った問題なのだということを強く実感しました。



