口髭がトレードマーク。齋藤精一郎さんは、テレビ東京系のWBS(ワールド・ビジネス・サテライト)のレギュラーコメンテーター、千葉商科大学大学院の会計ファイナンス研究科の教授、NTTデータ経営研究所取締役の所長をそれぞれ務め、エコノミストとして、社会経済学者として毎日多忙に飛び回っている。
はたして、デフレ脱却は本物なのか、今、まさに押し寄せてきているグローバリゼーション3.0の大きな波。デフレが終焉したあとの時代をどのように乗り越えていけばよいかを、若い世代との接点を持つ齋藤教授ならではの柔らかな視点を交えながら、お話しいただいた。
Profile:齋藤 精一郎(さいとう せいいちろう)
1940年東京生まれ。1963年3月東京大学経済学部卒後、同年4月から1971年8月まで日本銀行に勤務。1972年4月から2005年3月までの立教大学社会学部助教授・教授を経て、2005年4月から千葉商科大学大学院教授を務める。1991年4月からNTTデータ経営研究所取締役所長を兼任。テレビ東京系のWBS(ワールド・ビジネス・サテライト)などのコメンテーターを務める。主著書は近著の「大転換:日本経済2007年〜2015年」(PHP研究所)のほか「新成長経済の構想」、「10年デフレ」、「ゼミナール現代金融入門」(以上日本経済新聞社)など。訳書にガルブレイス著「不確実性の時代」(講談社文庫)などがある。
グローバリゼーション3.0とは:<第2回>
グローバリゼーション3.0についてお話しする前に、グローバリゼーションが起こるときの3つの要件である政治的要件、経済的要件、技術的要件を考えながら、グローバリゼーション1.0と2.0について少し整理しておきましょう。最初のグローバリゼーションは、1800年代前半からの、イギリスの産業革命を契機に始まりました。この頃、政治的要件として、みんな仲良く通商しましょうという機運が大きく生まれました。そして、経済的要件として、自由貿易論が台頭し、それを運河や蒸気機関といったネットワーク技術(物流技術)が後押してグローバリゼーション1.0が起こりました。
グローバリゼーション2.0が始まったのは、1870年からです。政治的には、フランスとドイツの戦争のあと、欧州に戦争が起こらなくなって、貿易を自由にすることにみんなが理解を示すようになりました。技術的には、帆船が蒸気船に代わりました。それがスエズ運河を行き来してアジアを結ぶようになると、新たなネットワークが構築され、世界のモノが大量に入ってくるとともに、出るという流れが活発になりました。モノだけではありません。ヒトも動くようになったのです。デカプリオが演っていた映画「タイタニック」もそうですけれど、米国に移民が大量に入ってくるようになったのです。グローバリゼーション2.0は、世界のモノ、ヒト、カネの交流をものすごく盛んにしました。
グローバリゼーション3.0は、1989年11月9日のベルリンの壁崩壊という政治的要件が発端となって起こりました。第二次世界大戦後、発展途上国の南の世界と、社会主義の東の世界、市場経済の西の世界と、世界全体は3つに分断されていた。ところが、冷戦終焉によって、北朝鮮や、キューバを除いたら、世界はみんな市場経済になってしまった。発展途上国もとたんに元気になって、昨日まで株式市場がなかったところに、株式市場を作ると、ヘッジファンドなどが、ドンドンお金を投入するようになりました。その結果、経済的にモノや資本がグローバルに動くようになってきたのです。技術的には、IBMのパソコン、マイクロソフトのウィンドウズなど、2.0の終わりの頃に胎動の兆しがあった新しい情報通信技術が、インターネットの民間開放を経て、新しい技術革新として集結しました。
冷戦が終わり、「ウィンドウズ95」の発売でインターネットが一気に爆発した1995年以降に、世界が一体的に動いていこうという仕組みができあがりました。この流れがグローバリゼーション3.0なのです。
私たちは今、まさに、グローバリゼーション3.0の真っただ中にいるわけです。だから世界には、津波が押し寄せていますが、1995年から、まだ10年ちょっとしか経っていません。うねりはこれからが本格化します。ですから、私たちはこの大波にすでに巻き込まれているという認識を持たないといけない。投資もそうです。グローバリゼーション3.0の時代では、国内だけに目を向けるのではなく、海外での運用も視野に入れて、お金もグローバルに捉えることが大切です。グローバリゼーション3.0は、大きな企業や一部の大きな金融機関だけの話ではありません。個々の小さな企業や、私たちの働いている職場、暮らし、また、「貯蓄から投資」といわれる資産運用の世界まで、もうグローバリゼーション抜きには考えられないところまできているのです。このことを多くの人に理解していただきたいです。
齋藤研究室にてインタビュー
編集:鈴木 佐知子
取材後記
世界規模で起こるグローバリゼーション3.0の大波は、日本にも間違いなく大きな影響をもたらしています。齋藤教授は、「今までの古い日本の社会やあり方を、そして、way of work(仕事のやり方)をも変えてしまう勢いで私たちに現実に襲いかかってきいている」とおっしゃっていました。大波を乗り切るには、「up or out。這い上がるか、淘汰されるかしかない。アップするには、今までのやり方を変えなくてはいけない」のだそうです。これからは、新しい創造性や多様性が求められる時代なのですね。



